交通事故

むち打ちの後遺障害で被害者請求を弁護士に依頼するメリット

交通事故による後遺症で特に多い「むち打ち」は、症状が外から分かりにくい・検査で症状や原因を証明しづらい・様々な症状が時間をおいて出ることも多く、事故との因果関係を証明しづらいなど、後遺症の損害賠償金を手に入れるために必要な「後遺障害等級認定」を受けにくい問題点があります。

むち打ちで認められる可能性のある後遺障害等級は12級や14級ですが、そもそも後遺障害の認定を受けられない「非該当」も珍しくありません。

そのため、少しでもよりよい証拠を多く提出できるよう、証拠を保険会社ではなく被害者側で集める「被害者請求」で申請することが重要です。

しかし、一般の方が弁護士に依頼せずに自分だけで被害者請求をするよりは、弁護士に手続を依頼したほうが良いでしょう。
この記事では、弁護士に被害者請求の手続きを依頼するメリットをお伝えします。

1.適切な必要書類を集められる

後遺障害等級認定の審査は、提出した書類や資料が非常に重要です。
適切な等級認定を受けるには、あなた自身の具体的な事情に応じて必要書類を集めることが重要となります。

弁護士に被害者請求を依頼すれば、具体的事情に応じた必要書類の種類や内容を検討して、よりよい資料を手に入れられる可能性を高くしてくれるでしょう。

具体的にはどんなことができるのか。以下、重要な資料ごとに説明します。

(1) 後遺障害診断書

後遺障害診断書とは、医師が後遺症の内容や事故以降の治療状況などの総まとめとして作成する認定手続専用の特別な診断書です。

後遺障害診断書の作成依頼や受け取りは、被害者の方が直接医師から行いますから、その時に表現のニュアンスや記載ミスのチェックなどができます。

注意すべきチェックポイントはいくつかありますが、特に大切なものが、「自覚症状」です。
詳しくは後に説明しますが、目に見える症状もなく検査結果も乏しいむち打ちでは、医師が認定した被害者の方の自覚症状の内容などが審査に大きな影響を与えます。

通院中の説明と異なるニュアンスが記載されていれば、その場で修正が必要です。

とはいえ、どのような記載だと修正が必要なのか・どのような内容に変えてほしいといえばよいのか・どうして修正が必要なのか理由を挙げて医師を説得できるのか、などの問題があります。

そこで、弁護士にあらかじめ後遺障害診断書で確認すべき点について助言を受けるべきなのです。

医師が弁護士との連絡を許すのであれば、弁護士から医師に手紙を送るなどして、後遺障害診断書の記載の意味や注意点を伝え、より適切な診断書を作成してもらいやすくもできます。

(2) 医学的検査

弁護士に依頼すれば、むち打ちの適切な検査を受けられるよう、医師を説得しやすくなります。

むち打ちでは、CTやMRIなどの画像検査で損傷が見つからなくても症状が出ることがあります。それでも、自覚症状や神経学的検査によっては、14級の認定が受けられることがありますし、画像検査で損傷が認められれば12級の認定がされることもあります。

後遺障害等級認定のためには、交通事故直後に精密検査を受け、それ以降もできる限り様々な検査を定期的に行う必要があります。

事故直後の検査結果に損傷があれば、因果関係が認められやすくなります。

事故直後なら画像検査で損傷が写りやすいということもポイントです。定期的な検査をすることで、症状の推移もわかります。

医師からすれば、そんな検査は治療には不要だと言われてしまうかもしれません。
ですから、場合によっては、弁護士による医師の説得が必要になるのです。

検査が後遺障害等級認定の証拠として必要になることを法律の専門家として伝えることで、医師が検査をしてくれることがあります。

2.医師に症状を正しく把握してもらいやすくなる

弁護士から、医師に対して症状をどう説明すればよいかのポイントを教えてもらいましょう。

むち打ちの症状は、検査ではわかりにくいため、自覚症状が記載されたカルテや後遺障害診断書が、症状の有無や内容の重要な証拠になります。

自覚症状について医師に的確に伝えることができないと、後遺障害の認定を受けにくくなってしまうでしょう。

弁護士から、医師に自覚症状を伝えるときのポイントを教えてもらえば、自覚症状をカルテや診断書に正確に記載してもらいやすくなります。

(1) 症状の一貫性

初診のときは「肩が痛い」といっていたのに、後になって「手がしびれる」というような場合があります。このように症状の内容や症状がある体の部位が違っていては、後遺症があるとは認められません。症状には「一貫性」が必要なのです。

自覚はあったものの他に比べれば軽い症状について、「このぐらいならまぁいいか」と、初診のときに言っていなかった場合、その症状をあとになって医師に申告することがよく問題になります。

事故によりむち打ちの症状が出たと認められるためには、事故から2、3日以内、遅くとも1週間以内には初診に行かなければいけません。

できればその前に、弁護士に初診のときからどのように医師に症状を伝えていくべきかのコツを確認しておきましょう。

(2) 症状の常時性

むち打ちによるしびれや痛みがほぼどんなときでもある。後遺障害の認定に必要な自覚症状の「常時性」です。
「パソコンを一日中使い続けた後だけ痛い」、というような「条件付き」の症状は、基本的に後遺症と認められないのです。

ところが、むち打ちの症状は、たいていの場合、何らかの条件を満たすと「一時的に悪化する」ものです。

「症状が普段はないけど特定の場合にだけある」は認められにくいですが、「普段から症状があるけれど、特定の場合には強くなる」なら認められます。

この違いを医師に分かってもらうには、具体的にどのように説明すればよいかを弁護士にサポートしてもらいましょう。

(3) 症状の回復

交通事故によるケガや後遺症は、交通事故直後が最も症状がひどく、だんだんと回復していくものです。

医師と話したときにちょっと調子が良かったので、「今は調子が良いです」と言ってしまうと、医師は、「症状は回復した」とカルテに記載してしまうおそれがあります。

次の診療で調子が悪くなったと医師に伝えたら、そのカルテを読んだ審査機関からすれば、いきなり症状が回復したり悪化したりしたように見えてしまうでしょう。

あなたの症状や医師の性格に応じて、どのように伝えればよいのか、弁護士に法律相談のときに教えてもらいましょう。

3.賠償金の相場が高額になる可能性

被害者請求で後遺障害と認定されると、まず自賠責保険からお金が支払われます。
その後に加害者側の任意保険会社から支払われる金額が、弁護士に依頼をしておくと通常増えるのです。

交通事故の慰謝料には、①自賠責基準、②任意保険会社基準、③弁護士基準、という3つの相場があります。

①自賠責基準は、最低限の損害賠償を保証する自賠責保険から支払われる慰謝料の基準です。
②任意保険会社基準は、それぞれの任意保険会社内部で作られている基準で、ほとんどの場合は、①自賠責基準よりわずかしか増えません。
③弁護士基準は弁護士に依頼した場合の基準で、他の基準よりもはるかに高額になる可能性があります。裁判所も尊重しているため、「裁判基準」とも呼ばれます。

弁護士に依頼すると、裁判費用の出費を嫌う任意保険会社は、弁護士基準に近い金額まで、支払う金額を増やしてくれることが多いため、賠償金を増やすことができます。

むち打ちで認められる可能性のある14級と12級の後遺障害慰謝料の金額は、2019年現在、以下の表のとおりです。

基準 14級 12級
自賠責基準 32万円 93万円
弁護士基準 110万円 290万円

このように、自賠責保険から自賠責基準での慰謝料の支払いを受けた後、弁護士に依頼して任意保険会社と交渉をすれば、14級なら80万近く、12級になると200万近くが、追加で支払われる可能性があるのです。

また、通院期間についての慰謝料や仕事を休んだことによる「休業損害」についても、弁護士に依頼すれば、自賠責からの支払いや加害者側の任意保険会社の言い値よりも多い賠償金を手に入れられる可能性が高くなります。

なお、実際には過失相殺により賠償金が減ってしまうことが多いこと、弁護士費用が掛かることも考えなければいけないことは確かでしょう。

しかし、弁護士はあなたの過失ができる限り少なくなるよう保険会社と交渉してくれますし、弁護士費用についても、「弁護士費用特約」を利用できれば、負担はかなり小さくなります。

4.手続の手間を減らせる

最後のメリットが、交通事故の損害賠償について対応する手間を減らせることです。これは意外と無視できません。

交通事故のあと、生活は一変してしまいます。
後遺症が残ってしまうと日常生活にも支障が生じますし、賠償金を減らそうとしてくる保険会社とのやりとりも大変です。

さらに、被害者請求で自ら後遺障害等級認定の資料集めをするとなると負担は大きく増えてしまいます。資料収集の負担は、被害者請求の大きなデメリットなのです。

弁護士に依頼すれば、被害者請求で集めるべき資料や書類の記載内容についてサポートを受けることができますから、資料収集の負担が一気に減ります。

医師とのコミュニケーションをスムーズにできることもありますし、保険会社との対応も弁護士が行いますから、面倒な交渉のストレスからも解放されます。

5.まとめ

被害者請求で後遺障害等級認定や後遺症の損害賠償請求をすることは、弁護士に依頼しなくてもすることはできます。

しかし、弁護士に依頼すれば、「適切な資料を作成・収集して認定される可能性が高くなる」「賠償金の金額が増えやすい」「治療や仕事、生活に専念できる」などの大きなメリットが生じます。

むち打ちの後遺障害等級認定を検討されている方はどうぞ弁護士に被害者請求をご相談ください。

泉総合法律事務所は、これまで交通事故でむち打ちになってしまった方の被害者請求をお助けしてまいりました。
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