債務整理

子どもが自己破産をした場合について|親がとるべき対応

子どもが自己破産をした場合について|親がとるべき対応

子どもが自己破産をしてしまった場合に、親である自分にも悪影響が及んでしまうのではないかと心配になってしまう方もいるのではないのでしょうか。

また、子どもの自己破産に巻き込まれたくないとか、逆に、子どもが自己破産する上で手助けをしたいという思いがある方もいると思います。

ここでは、子どもが自己破産した場合に、親にどのような影響が及ぶのか、親がどのようなことをしてあげられるのかを説明します。

1.自己破産の基本

自己破産は、借金全額を支払えない債務者が、裁判所に申立てをして、自らの財産を債権者に配当する代わりに借金を原則として全て無くしてもらう債務整理手続です。

自己破産により借金が無くなることを免責と言い、裁判所が免責を決定することを免責許可決定と呼びます。

(1)手続の種類

自己破産の手続には、管財事件と同時廃止という手続の種類があります。

管財事件は、債務者の財産を配当したり、また、免責をするには不適切とされる事情である免責不許可事由を調査したりする場合に用いられる自己破産手続の種類です。
裁判所により選任された破産管財人が配当処理や免責不許可事由の調査を行い、裁判所を補助します。

同時廃止手続は、破産管財人が選任されず、配当手続も省略された、簡単な自己破産手続の種類です。
債務者に配当できる財産がなく、免責不許可事由もないなど、破産管財人を選任するまでもない場合に用いられます。

(2)免責不許可事由について

免責不許可事由があったとしても、裁判所が債務者の一切の事情を考慮して免責を認めているため、ほとんどの場合は免責を受けることが出来ます。この制度は裁量免責と呼ばれています。

もっとも、悪質な場合には、本当に免責されない場合が無いわけではありません。

(3)財産の処分について

自己破産手続では、債務者が一定以上の財産を持っている場合には、裁判所により換価され、債権者へと配当されます。

(4)詐害行為

もし、自分が自己破産するとわかったうえで、財産を他人に譲るなどした場合は、債権者への配当を不当に減らしたとして、詐害行為と呼ばれる免責不許可事由になってしまいます。

(5)自由財産

自由財産と言って、債務者の生活に必要な財産は、処分されませんが、家財道具のほかは、現金99万円まで、他の財産は品目ごとに20万円以下の価値を持つ場合しか、自由財産と認められません。

自由財産の範囲は、裁判所の許可があれば広げることが出来ます(自由財産の拡張と呼ばれています)。

もっとも、拡張にも限界があるうえ、裁判所により運用が異なりますので、専門家の助力が不可欠です。

(6)債権者平等の原則

公的機関である裁判所において行われる自己破産手続では、債権者は債権額に応じて公平に扱われなければならないという重要なルールがあります。これは債権者平等の原則と呼ばれています。

債権者平等の原則があるため、債権者全員が自己破産手続の対象になります。

(7)偏頗弁済

支払不能後に特定の債権者にだけ優先返済することは、債権者平等の原則に反して他の債権者への配当を減らす行為であるとして、偏頗弁済と呼ばれる免責不許可事由に該当します。

(8)債権者平等の原則の例外 担保権を持つ債権者

担保権を持つ債権者は、債権者平等の原則の例外として、優先的に債権を回収できます。

具体的には、借金の担保となっている財産、たとえば、住宅ローンの抵当権のついているマイホームや、自動車ローンのために所有権が留保されている自動車などを処分して、その処分代金から優先的に回収をすることが出来ます。

それでは、子どもが自己破産をした場合の問題点について説明します。

2.子供の借金の保証人となっているために、親も債務整理をせざるを得ない場合

子どもの奨学金や住宅ローンの保証人となっている場合、子どもが自己破産をすれば、保証人である親へと借金残高の一括請求がされてしまいます。

分割返済の交渉が失敗してしまった場合には、親も自己破産をせざるを得ない恐れが出てきます。

このような場合に、親の自己破産で問題となりやすいことは、下記のとおりです。

(1)退職金

一般的に、退職金は債務者の財産ではあるものの、将来確実に手に入れられるか不透明であるため、見込額の8分の1だけが処分の対象となります。

ところが、子どもが借金の返済に行き詰るような年齢になっている場合、親も高齢であることが多いでしょう。

定年間近である場合には、退職金をもらえる確率が高いとして、処分の割合が4分の1にまで上昇してしまう恐れがあります。

すでに退職金の支給を受けている場合には、現金や預金として扱われてしまいますから、大部分が処分の対象となってしまいます。

(2)生命保険の解約返戻金

積立型の生命保険の解約返戻金も処分対象となる財産ですが、高齢の方の場合、それまで生命保険料を長年支払ってきていますので、高額になってしまいがちでしょう。

そのため、自由財産としては認められ難く、よほど必要性が認められない限り、自由財産の拡張も困難となってしまい、全額を没収されることになりかねません。

契約者貸付制度により現金化させることも考えられますが、詐害行為や偏頗弁済を疑われないよう、慎重な行動が不可欠です。

3.子どものための援助

親が、子どもの自己破産に際して手を差し伸べる場合、主に下記のような点について手助けをすることが出来ます。

(1)自己破産の費用の援助

自己破産をするには、弁護士費用が、相場としては20万から40万円ほどかかり、管財事件になると破産管財人の報酬予納金が20万から50万円ほどさらにかかります、

通常であれば、弁護士が債権者に受任通知を送付して取立を止めさせえた後に、借金返済に充てていたお金を積み立てることになります。

しかし、すでに訴訟をされていて給料差押えが近い、あるいは、給料をすでに差押えられている場合には、親の援助によってでも、早急に費用を用意して、自己破産を申立てなければならないことがあります。

(2)第三者弁済

第三者弁済とは、本来お金を支払うべき人間の代わりに、契約の当事者とは関係のない第三者がお金を支払うことです。

賃料の滞納がある場合や、自動車ローンが残っている場合など、特定の債権者に優先して返済しなければ、アパートを追い出されたり、自動車を処分されたりなど、生活に大きな不利益が生じるものの、債務者本人が返済をすると偏頗弁済になってしまうことがあります。

このようなときに、債務者である子供に代わって、親が第三者弁済をすることで問題を解決できる場合があります。

(3)任意売却

マイホームは、住宅ローンの有無にかかわらず、裁判所か住宅ローン債権者により処分されてしまいます。

そこで、自己破産手続が始まってしまう前に、債務者である子供のマイホームを親が買い取り、子どもに貸し渡すことで、子どもが従来通り家に住み続けることが出来ます。

なお、この方法は、不当に安い価格で売却した詐害行為であるとか、最悪、名義を子供から親に変えただけの財産隠しとされかねず、悪質な免責不許可事由になりかねません。

時価相当額での適正な取引をしたと裁判所を説得できるだけの十分な証拠資料が不可欠です。

4.免責不許可事由となる危険のある行為

(1)債権者一覧表への記載について

債権者一覧表は、自己破産手続の対象となる債権者全員を記載して裁判所に提出する書類です。

もし、子どもが親に借金をしている場合であっても、親を債権者として記載しなければなりません。記載漏れがあれば、免責不許可事由になりかねません。

子どもに対して、自己破産手続に巻き込まないように債権者一覧表に親を記載するなというような圧力をかけないであげてください。

後述する偏頗弁済や詐害行為さえしていなければ、大きな面倒ごとに巻き込まれることはありません。

(2)偏頗弁済

子どもが親から借金をしている場合、親といえども債権者ですから、他の貸金業者や銀行と平等に扱われなければなりません。

親に対してでも、優先的に弁済をすることは、偏頗弁済として禁じられているのです。

自己破産をする前に、せめて親にだけでも借金をちゃんと返せと言いたくなる気持ちはわかります。しかし、子どもの負担をむやみに増やさないためにも、ここはひとつ我慢して下さい。

(3)詐害行為

任意売却のところでも触れましたが、親子間の財産取引は、詐害行為とみなされる恐れが高くなってしまいます。

詐害行為では、債務者の取引相手が自己破産の可能性を認識していたと言えることが必要なことが原則ですが、相手が親の場合には、債務者が自己破産することを知っていただろうとみなされ易くなってしまうためです。

偏頗弁済や詐害行為があると、破産管財人は、否認権という権限に基づいて、偏頗弁済や詐害行為の相手方に対して、財産の返還を請求することが出来ます。

子どもに対して、親にだけでも借金を返させても、また、財産を事実上維持することに手を貸しても、否認権の行使により元通りになってしまいます。

5.子どもの自己破産は弁護士に相談を

自己破産手続は、世間的には人生の終わりとみなすような風潮がまだまだ強いと思います。そのため、お子さんが自己破産をすると聞いて、悲しみや怒りを感じる親も少なくないでしょう。

実際のところ、自己破産手続は、国が認めた、借金漬けの生活から解放され、新たな人生を歩むための手段なのです。子どもが人生をやり直せるよう、出来る限りでの協力をしてあげてください。

もっとも、安易な援助はかえって逆効果になってしまうこともあります。弁護士の助言のもと、適切なサポートをすることが重要です。

子どもの借金の保証人になっていた場合には、親自らも自己破産を視野に入れて行動する必要もあります。

泉総合法律事務所では、自己破産により借金問題を解決した実績が多数ございます。是非ともお気軽にご相談ください。

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